人の思っていることが聴こえてくる
確先生は思っていることが、どんどん聞こえてくる能力があったそうです。
人が心の中で思っていることが、そのままダイレクトに伝わきてしまうのだそうです。
これは非常に重宝なようでもありますが、少なくとも確先生の体験で言えば、この能力で嫌な思いをしたことの方が多いと言います。
いくつか書きます。
〇 ある時、用事があって知人の家を訪ねた時のことです。
応対にでてきたのは、初対面の人ですが、知人から話に聞いていた人です。
その人はにこやかに「いらっしゃいませ。さあ、どうぞ、どうぞ、おあがりください」と愛想よくニコニコとして言いました。
でも、確先生にはその人の心の声が聞こえるのです。
「ああ、これが親戚中で気ちがいだという噂の確か。いや親戚ばかりじゃない、親兄弟までが,"確の気ちがい”といっていたっけ……」そんな心の声が聴こえた確先生は、とても平静でいられず、思いっきりギョロリ、と目をむいて相手をにらみつけて、そのまま一言も言わずにさっさと引き上げてしまいました。
そうなると、ますます「ああ、あの確はやっぱりヘンなんだ、気ちがいなんだ」という事になるのでした。
〇 知人の結婚式でのことです。
確先生が披露宴の席について、しばらくしたころです。
広いテーブルに次々に着席する招待客たちの心の声が、さざ波のように聴こえてきました。
「あれが気ちがいの隈本か」
「ああ、あれが大酒飲みで若い頃は喧嘩ばかりしていたという、あの隈本か」
「家が手広く商売をしているからって、威張り散らしてばかりいるというのは、あの男か、ふん、なるほど傲慢そうな顔をしているわ……」と、こんな調子で、あっちからもこっちからも、列席者の心の声がザワザワと聞こえてくるのでした。
ついに、確先生はいたたまれなくなって、披露宴が始まる前にさっさと席を立って家に帰ってしまいました。
すると、招待主を初め、招待された人たち全員が不快な表情をあらわにして、心の中では「やっぱり」と言っているのです。
「やっぱり、あいつは気ちがいだ。それにしても、披露宴も始まらないうちに帰ってしまうとは、何という無礼な奴なんだろう。これからは、あの人間と付き合うのは、いっさいやめよう」という事になるのでした。
こんなことが重なって、確先生の"気ちがい”の噂はますます広まりました。
〇 確先生の心の声が聴こえる能力は、それだけではなかったのです。
お土産物や贈り物とかの物品からでさえも、その送り主の声が聴こえてきたのです。
例えば、土産物をあけた途端に、その菓子折りの中から相手の声が聴こえるのです。
「あの気ちがいには、これくらいのものをやっておけば邪魔しないだろう。ああ、これをやっときゃいいさ」
途端に、確先生は、菓子折りごとわしづかみにして、庭に、土間に、たたきつけるのです。
〇 こんなこともありました。
用事があって親せきの家に出かけて、そこで食事が出されると、食卓に並んだ皿の中からも、ご飯の盛られた茶碗の中からも、その家人の声が聴こえてくるのでした。
「確の気ちがい、早く帰りゃあいいのにさ……」
またしても、確先生はものも言わずにスクッと立ち上がって、そのまま家に帰ってしまうのでした。
当時、まだ若かったこともあって、典型的な読心術のために、端から見るとずいぶんと失礼な態度をとっていました。
知らなくていい事がある
う~ん、私も人の本心を知りたいと思うと気がありますが、確先生のこの体験談を読むと、知らなくていいなぁと思いました。
人間、知らないほうがいい事ってありますからね……
人間は肉体があるから、本心を隠せます。
だから、本心は地獄の住人のような腹黒い人でも、天使のような清らかな心を持った人とでも交流を持つことができます。
凡夫の私がこんなことを言うのもなんですが、人間をつくられた創造神である素の親様は、やっぱりすごい方ですね。
人間であるときは、相手の心の中が見えないので、地獄の住人の心を持つ人間も天使のような清らかな心をもつ人間も、同じ人間です。
それだから成り立っている人間界ですが、人間の本心を知ると、穏やかでいられなくなったり、逆に相手の優しさを知ったりすることもあると思います。
たぶん、良い事より嫌なことの方が多い気がします。
そんなことは当たり前だと言われれば、当たり前なんです。
でも、素の親様は人間界にいる時に、魂を磨き向上させなさい、という課題を私達人間に与えられています。
この人間界では、人を殺してはいけない、とか人間界の中でのしてはいけないという掟があります。
でも、大霊界での掟は人間界の掟とは全く違います。
大霊界では、魂だけになった時に魂の行き先がはっきりして、もう二度と地獄界の住人と、天使のように清らかな心を持つ人とはかかわれません。
本当は、人の本心を知ると怖いという事を書きたかったのに、全然違う話になってしまいました。