前回の続きです。
隈本確先生のおかげで見事に免れた小野さん
小野さんは、そう言うと、隈本確先生の前で、しきりに考え込む風にしていました。
そして、墓師の言う150万円ほどのお金も、手元には半分しかないので、あと半分は銀行から借りて、長期の月賦ででも払おうか、などと具体的な話を持ち出してくるのでした。
しかし、隈本確先生は、小野さんの話をいろいろと聞いているうちに、次第に怒りがこみ上げてきました。
「小野さん、あなた、その墓師を警察に訴えませんか。それは全くの脅迫ですよ。例えば、あなたが、店の前を通る人を呼び止めて『私の店の呉服を買って着物をつくらなければ、息子さんが死にますよ』というのと、まるっきり同じことではありませんか。相手は商売で言っているんですよ。だいたい、借金までして墓をつくって喜ぶそんな先祖がいるでしょうか。だって、そうでしょう。あなたが母親を喜ばせようと思って、何百万という借金をして宝石や着物を買ってあげたところで、お母さんは喜びはしないでしょう。もし、借金までして墓を立てなければ、その子供を殺すというような先祖がいたら、私に言ってきませんか。そんな先祖霊は、私が叩き潰してあげますから!」隈本確先生がここまで言いうと、さすがの小野さんも、やっと安心したように表情がほぐれました。
「やっぱりそうですかね。私も、墓師にしてもどうもいうっ事がおかしいとは思っていたんですよ。でも、息子が二十歳で死ぬなんて言うもんで、もうびっくりしてしまいまいまして……」
と言いながら、安心したように、照れくさそうに笑う小野さんでした。
小野さんは、その後数年して、自宅近くのお寺に総額30万円ほどで墓をたてたそうです。
そして、あの不意にあらわれた墓師の言うままにならずに済んだことについて、大変喜び、何度も何度もお礼を言うのでした。
蛇足ながら、もちろん、息子さんは二十歳を過ぎても、元気でピンピンしています。
このように墓一つとってみても、巷には、人の心の弱点を悪用した詐欺まがいの行為が横行しているのです。
ましてや、宗教とかご祈祷の名の元に、一般人をまどわす罪深い迷信的修法は、何らの法的規制を受けることもなく、暗雲の世界で日々行われているのです。
しかし、私達はここで、神霊世界のそのような不透明な部分をつくっているのが、他ならぬ自分たちであることにも気がつかなければなりません。
何故なら、未だに世間一般の多くの人達が正しい神霊の世界を知らず、自ら非科学的迷信の世界で踊り狂っているからです。
その上、もっと視野を広げてみれば現在、神霊学の世界では、それが五感で認識されない世界であるがゆえに、唯物的思考に押しまくられ、社会の片隅に追いやられてしまっているとも言えます。
そして、それがかえって社会の表面にあらわれないところで、常識外れの悪意を蔓延させる結果となっているのです。
我が家の場合のオレオレ詐欺
こうやって人の弱みにつけこんで、大金を出させようとする輩が後を絶ちません。
小野さんは、隈本確先生に相談に行って良かったです。
しかも、息子さんは元気だという事でよかったです。
この人の弱みに付け込んでという面では、オレオレ詐欺も似ているかなと思います。
我が家でも昔ありました。
私は、だまされやすいのです。
ひっかかりそうになりました。
20年近く前です。
午前でした。
次男から電話がかかって来て、泣きながら
「先輩と仕事で会社の車で出かけて、事故ってしまった。相手の車は会社で36数万円するから、その半分を18数万円を自分が払わなくてはならない」と言っていました。
私は、驚きましたが、泣いている次男を落ち着かせなくてはいけないと思って、しきりに「落ち着きなさい」を連発したことを覚えています。
それと、今いる場所を聞いたのと、携帯はどうしたのかと聞いたら、事故った時に完全に壊れて駅前の公衆電話からかけていると言っていました。
内心思ったのは、次男はIT系の仕事をしているのに、会社の車を運転をするとはおかしいと思ったのと、やけに18数万円とは細かいなあ、と思っていました。
それでも「お父さんとも相談するから、いったん電話を切るよ」と言って、夫に電話をすると即「それはオレオレ詐欺だと思う」と言って、すぐに帰宅してきました。
その後、また次男という男から電話がかかって来て、警察だという男とも話をしました。
電話を夫に変わってもらうと、夫は「オレオレ詐欺だろう、警察に電話をする」と言って、電話の相手と喧嘩をしだしてしまいました。
その後、電話を切って警察に相談をすると、次にかかってきても留守電にして電話に出ないようにと言われ、そのようにしました。
念のため、次男の会社に事情を話して、次男の存在の確認をしたところ、親が会社に電話をしてきたのでとても迷惑そうな声の次男が出てきました。
翌日の新聞には、我が家の前と後の時間帯に見事に騙され被害にあった人たちのニュースが載っていました。