タヌキの霊をはずす方法
隈本確先生の治療所に治療依頼に見えた北海道の川瀬みずえさん(仮名)は、4~5年にわたる偏頭痛に悩まされていて、隈本確先生のところに来る前に、ある霊能者の元を訪れていました。
もちろん、川瀬さんは自病になってしまった偏頭痛を治してもらいたくて、その霊能者のところへ行ったわけですが、この時のことを、彼女はこんなふうに語っていました。
「その霊能者の先生によりますと、何でも、私にはタヌキの霊が憑いていて、そのために頭痛もちになってしまったというのです。
で、その憑りついているタヌキを外せば頭痛が治るというので、その外し方を指導してくださいました。
その方法は、まず仏壇にまんじゅうを供えて、自分に憑りついているタヌキの霊に対して、”タヌキ様、どうか、私から離れてください”と、真剣に祈るのです。
それから、深夜の二時に、誰もいないのを見計らって、そのまんじゅうを川に流さなければなりません。
そうして、流した後は決して振り返ってはならない、という事でした。
私は、実行しました。
言われた通りにタヌキ様にしっかりお願いし、まんじゅうを川に流しました。
でも、頭痛はいっこうに治りませんでした。
それで、霊能者の先生にそのことを申しますと、まんじゅうを川に流すところ誰かに見られていたんでしょう。
と、こういうのですね。
けれども、私は絶対に誰にも見られていないという確信がありましたので、それをはっきり申しました。
すると、その霊能者の先生は、不機嫌そうになって“あなたが知らんでも、誰かが見てたのさ”!と言い捨てて、後は全く取り付く島もありませんでした”」
「ところで、川瀬さん、まんじゅうは何個捨てたんですか」
「15個です」
「15個も?もったいなかったですなぁ、食べてしまえばよかったのにィ」
隈本確先生がこういうと、川瀬さんは、初めてニヤッと笑って、ちょっとばかり恥ずかしそうな様子を見せました。
それにしても、まんじゅうを川に流す時に人に見られたら病気が治らなくて、見られなかったら治るなどというおかしなことが、この世にあるのでしょうか。
大の大人が、大真面目で依頼人に対して、このようなことを指導している図も滑稽ですが、指導された方も、民話のようなそんな迷信をコロリと信じて実行してしまうのですから、人間とはたわいないものです。
しかし、この川瀬さんの話など、滑稽でバカバカしいとは思っても、まだ、かわいげがあります。
一方、同じタヌキの霊にまつわる迷信でも次回に書く方が体験した話になると、陰湿で、邪悪でさえあります。
逃げ道はちゃんとつくってある
今回の記事は、他人事のせいかちょっと笑ってしまいますが、4~5年のものの長い間頭痛が続いていたら、笑い事では済まされません。
まんじゅうを川に流すことで治るのなら、とたぶん思ってしまう気持ちはわかります。
そこに付け込んだんでしょうね。
この霊能者は、逃げ道をちゃんと作ってありますね。
「深夜の二時に、誰もいないのを見計らって、そのまんじゅうを川に流さなければなりません。
そうして、流した後は決して振り返ってはならない、という事でした。」
この状態では、深夜の二時にまんじゅうを川に流して、後ろを振り返ってはいけないと言われれば、持病が治らなくてもあなたが気がつかないだけで誰かが見ていたんでしょうと言えば、それで通りますからね。
いくら本人がそんなはずはありません、と言ってもどうしようもありません。
この霊能者は、上手い方法を考えたものです。