前回の続きです。
気づいた母親
「娘が可愛いから、立派な大人になってもらいたいからいろいろ小うるさいことも言わなければならないと無意識のうちに思い込んでいたわたくしでしたが、あの日、帰りの道すがら、先生の言われたことを何度も何度も、胸に復習してみたのです。
と、その時、フッと思い出したことがありました。私がまだ小さい頃、よく遊び行った田舎の祖父母の家のことなのですが、そこではウサギを飼っていました。で、ウサギに赤ちゃんが産まれますと、すぐに小屋の周りに覆いをしてしまいました。で、飼い主の家族にも見えないようにしてしまうのです。
幼い私が不思議に思って聞いてみますと、ウサギの母親というのは、たとえ飼い主でも人間が自分の産んだ子ウサギのそばに来ると、本能的に何か危害をくわえられると思って、自分で自分の子供を踏み殺してしまう、ということなのでした。
その時、私はこども心に、ウサギって変な動物なんだなあと感じたものですが、思えば、わたし自身も我が子にウサギの母親の様な仕打ちをしていたんだ、ということに気がついたのです。心の底では自分の娘を可愛い可愛いと思いながらも、その心とは反対に、毎日毎日、娘の心を逆なでするような嫌味を言ったり、小言ばかり言う母親でした。娘にとっては、さぞうるさい、嫌な母親だっただろうと、つくづく反省させられました。
もちろん私も親ですから、気づいたことは娘に注意も致します。ですが、今までのように自分の感情にまかせてガミガミ言ったり、いつまでもブツブツ言い続けるようなことはしないように気を付けています。考えてみれば、今までは娘のために言っているのではなくて、自分が納得するために、自分の気がすむために言っているようなものでした。我が子を大切な先祖さんんだと思えば、とても、そんな自分本位の勝手なものの言い方はできないものだと、つくづく知りました。
今まで、娘は、さぞ苦しかったろうと思います。そして、そんな風に娘をおい詰めていたのは私の心だったのですね。そのことに私が気づいて、大きく自分の心のあり方を変えようと決心した瞬間から、娘は、先生のおっしゃったとおり、我が家の立派な先祖さんになってくれました。家の手伝いもよくするようになりましたし、勉強も一生懸命しているようです。来年は高校生になるんだと言って、張り切っておりますし……。本当に、先生のおかげです」
そう言いながら、深く頭を下げるこのお母さん、先日の針千本の様な母親と打って変わって、まろやかな、包容力ある母親になりきっているようです。
そのうえ、母親としてのあり方をしっかりつかんだせいか、女性としての美しさまで加わったように見受けられました。
華麗に咲きほこる洋蘭の鉢植えを隈本確先生の机の上に飾ってくれたこのお母さんとお嬢さんは、二人ともに、深々と頭を下げて帰っていくのでした。
この内容覚えていたら良かった
>自分の感情にまかせてガミガミ言ったり、いつまでもブツブツ言い続けるようなことはしないように気を付けています。
>娘のために言っているのではなくて、自分が納得するために、自分の気がすむために言っているようなものでした。
そうなんですよね、自分では子供のためと思い込んでいろいろと言うのですが、気を付けないと自分の気がすむために言っている時があります。
怖いのは、それを親は子供のために言っていると思い込んでいても、子供はとっくにその親の勘違いに気がついているのです。
>そのことに私が気づいて、大きく自分の心のあり方を変えようと決心した瞬間から、娘は、先生のおっしゃったとおり、我が家の立派な先祖さんになってくれました。
良かったですね。
言葉にしなくても通じるのでしょうか。
私も今でこそ子供は成人をして、そういう思いをすることもなくなりましたが、まだ成人していない頃というのはけっこう難しかったです。
今、子育て真っ最中のお父さんお母さん、迷うことや悩むこと、イライラすること沢山あると思いますが、そんなときは一呼吸おいて、自分の子供だありながら自分たちのご先祖様だと思って見直してみると、子供を見る目が違ってくるかもしれません。
この内容を読んでいたはずなのに、全く覚えていませんでした。
この内容を自分自分のものにしていたら、もっと子育てが楽だったかもしれません。
反省です。