前回の続きです。
隔世遺伝
隈本確先生は、お嬢さんの脇で、なお苦々し気な顔つきをしている母親に向って、やおら言いました。
「園田さん、あなたは隔世遺伝ということを知っていらっしゃいますか」
すると、この母親は不審そうな表情をあらわにして答えました。
「はあ、存じておりますが……、遺伝と言っても、病気や性格が親から子供に直接伝わるのではなくて、例えば、おじいさんとかお婆さんの性質を、直接の親を飛ばして孫が受け継ぐといった、そのようなものと思っておりますが」
「そのとおりですよ。園田さん、そこのところを、ようく考えて下さい。今、あなたの隣にいるお嬢さんは、確かにあなたの子供でしょう。しかし、隔世遺伝ということでもわかるとおり、このお嬢さんは、あなたやあなたのご主人の両親、さらにもっと昔のご先祖の性格とか身体的特徴を受け継いでいるということも、当然いえるわけですね。
ですから、あなたたち親子のご先祖の問題にしても、こんなことが言えるわけです。例えば、あなたは十代ぐらい前、つまり300年ぐらい前の先祖さんの霊流を、背後霊とか守護神という形で強く受けているかもしれません。ところが、ひょっとしたら、このお嬢さんには、それ以上に古い600年とか700年前の先祖さんの霊流が流れているかも知れないのです。
そうしますと、人間の肉体上はあなたとこのお嬢さんは母娘に違いないでしょうが、霊的には、必ずしも親子とは言えないかもしれないということになりますね。お嬢さんの方があなたよりも古い、格の高い先祖さんの流れを強く受けているということだって、十分、あり得ることなのです」
ここまで隈本確先生の話を聞いていたこの母親は、表情をかたくして、ほとんど色を失っています。
いったいこの先生は何を言い出すのだろうと、心の中でしきりに言っているのが聞こえてきます。
そこで、隈本確先生は話を先に進めることにしました。
「では、ここで結論を申しましょう。あなたは、自分のお嬢さんを先祖さんとは思うことができませんか。
そして、お嬢さんに対する今のあなたの正直な気持ちを、よく考えてみてください。つまり、子供に対する現在のあなたの想念の世界を自分でよく観察するということですよ。先程からあなたに接していて、確かにあなた自身、初めは子どもを思う親心から、お嬢さんに接していろいろ小言を言うようになったということはよくわかります。しかし、今のあなたは、それが少しばかりエスカレートしていませんか。
お嬢さんを目の中に入れてもいたくないという本当の母親の愛の気持ちと、憎い、憎い、何とかこの子をねじ伏せてやりたいという、その憎しみの心と、どちらが強いでしょうか。
小さな落ち度も見逃すまいというあなたのその心、そんな状態で親子関係を続けていくならば、もう、先はわかったようなものではありませんか。
あなたの言われる、お嬢さんの素行を修正するということ、これはもう神様の仕事ではありません。人間である母親のあなた自身の問題です」
次回に続きます。
我が家の隔世遺伝
>「園田さん、あなたは隔世遺伝ということを知っていらっしゃいますか」
隔世遺伝、こういうことを感じたことがあります。
私の実家の父方の祖父は、とてもケチです。
母から聞いたのですが、
私の実家は、三代ごとになくなっているのだそうです。
でも、そのなくした次の代で、また立ち上げていることの繰り返しだったといいます。
祖父の父親の代で実家がなくなっているのです。
昔は比較的多かったようですが、お坊ちゃんだった曽祖父はお金のことを知らないで育ったために、騙されて人の借金の保証人になったのだそうです。
だから、祖父が実家を立て直すのに大変な苦労をしたようです。
だから、とてもケチなんです。
家族の誰かが無駄をするのではないか、と常に目を光らせていました。
祖父母と寝ていた私は、いつもこの二人から両親の悪口を聞かされていました。
特にお金の話が多く、「またあんな無駄遣いをした」とか「もうすぐ○○の支払いなのに大丈夫なのか」とか言いながら、自分のお金は絶対に出さない、という祖父母でした。
それに反発をした私は、お金にはほとんど執着がなく、だからいつもお金には縁がなく生きてきましたが、何とか今まで生きてきました。
夫もあまりお金には執着がありませんから、我が家はいつも福沢諭吉さんにはあまり縁がありませんでした。
ところが、そんなわたしたち夫婦に違う子供が生まれました。
幼稚園の七夕様の笹の願い事に、「金持ちになりたい」と書いたのが次男です。
その後、成長して就職をしても給料が少ないと言って、自分の経済を安定をさせたいと色んなことに挑戦をしていたようです。
結局、投資の方で落ち着いたようですが、あまり聞くと怒るので聞けないでいます。
いつも「金がない、金がない」と言っていた次男でしたが、気がついたら次男の口からその言葉を聞かなくなっていました。
結局は経済的に自立をしてくれて、良い方に落ち着いたのですが、この子はどうしてこうなったんだろうと思ったら、私に浮かんだのは実家の祖父でした。
自分では、普通に歩いているつもりだったのですが、「畳のヘリが減るから、すり足で歩くな」と祖父に怒られました。
まるで、吉本喜劇みたいなことを言っていました。
だから、次男は祖父の隔世遺伝ではないかと思っています。