夜叉界での木戸さんの奥さんの様子
前回の続きです。
なんと、木戸さんの奥さんは仰向けにひっくり返り、キツネの様な妖怪に髪を一束にギュッとつかまれたまま、噴煙立ち込める大地の中をズルズル、ズルズル引きずり回されているのでした。
木戸さんの奥さん自体、暗く沈んだ死の世界の色彩をしています。
あっと、思った隈本確先生の心の映写幕の前で、妖怪は、木戸さんの奥さんをまるで荷物のようにひょいと肩にかけました。
妖怪の両の手は、相変わらず木戸さんの奥さんの髪の毛を束ねて握りしめたままです。
妖怪はどこへ行くつもりなのか、何をするつもりなのか、木戸さんの奥さんを放そうともせず、噴煙口だらけの灰色の大地をあちらこちらと歩き回っています。
その 妖怪の姿たるや、まさにものの怪そのもの、全身はくすんだ紫がかった灰色で、ところどころに嫌らしい緑色がにじんだように浮きい出しているのです。
顔つきはといえば、耳には両耳とも犬のごとくピーンと立ち上がり、口は細長く突き出しています。
犬というよりは、キツネの顔であります。
手、足、胴体はどうかと言えば、これは人間の形をしています。
しかし、何ということでしょう。
やはり犬のように細く長いしっぽが生えているではありませんか。
その全身像は、大型の犬かキツネが立ち上がった姿のようにも見えます。
しかし隈本確先生は、その頃にして、ようやく動物霊の否定をするまでに霊的成長を遂げつつありました。
つまり、当時の隈本確先生は、動物の霊魂が人間に憑依して人間を苦しめるようなことは決してありえない、という確信を固めつつあったのです。
次回に続きます。
私の想像
私が体験をした話です。
60代で亡くなった男性が、亡くなってからみるみるうちに動物のようになっていったのを見たことがあります。
その頃は、私も少しは霊というものがわかるようになっていた頃でした。
顔がみるみるうちに変わっていきました。
目が大きく見開き、黒目は小さい点のようで、鼻は獣のようにちょっと出て、口は耳まで裂けている感じでした。
耳は動物のようにピーンと伸びて大きくなっていました。
でも全身はとても小さくて、手は小さく飾りについているくらいになり、足は二本、短くなってまるで鶏のようにちょこちょこ歩いていました。
この顔や体の変化は心の想いそのままが出ているのではないかと思いました。
ずいぶん前ですが、コメディアンの萩本欽一氏が新聞にコラムを書いていた時の記事がとても興味深かったことを思い出しました。
萩本氏が言うには、人は年をとると気を付けなければいけない、というのです。
萩本氏によると、年をとると、口は小さく耳は大きくした方が良いというのです。
口は小さくということは、あまり自分を主張しないほうが良いということであり、耳を大きくということは、人の話を聞きなさいということです。
その頃は私は中年の域だったので、自分が年をとったら気をつけねばと思いました。
私が見た亡くなった男性の姿は、彼の想いそのままだったのではないか、と勝手に想像をしました。
小さくなった体は気の小ささがあらわれており、目は大きく見開き黒目が小さいのは人のあら捜しばかりをしていた姿ではないか、と。
鼻はわかりませんが、口は自己主張が強いのではないかと思い、耳が動物のようにピーンとのびて大きいのは人のうわさ話ばかりを聞いていたからではないかと思いました。
同じ耳が大きくても人の話をしっかり聞く大きな耳は、大黒様のようにふくよかな大きな耳になる気がします。
手が小さいのはやるべきことをやらないことではないかと、想像してしまいました。