動物霊の正体
前回の続きです。
隈本確先生は、この大型の犬かと見まごうばかりの妖怪も、必ずや人霊に相違ないという判断を下しました。
そうして、隈本確先生は自分自身をさらに強度の霊媒体質に切り替えて、より深い霊視の状態に入っていきました。
隈本確先生は、この妖怪を通して、妖怪自体の後方遥か彼方に霊視感覚の世界を広げていきその生前の姿を求めたのでした。
隈本確先生の眼前には、またしても思いがけないありさまがパノラマのように展開されました。
今をさかのぼること800年、そこはいずこの地か、荒れ野原であります。
ちろちろと燃える焚きにを囲んで、傍若無人なありさまで酒を飲み交わしているのは、野武士の一団でありました。
野武士というよりは、山賊と言ってしまったほうがより適切でありましょうか。
とにかく、恐ろしく荒れくれた様子で、皆てんでに大きな盃になみなみと酒を注ぐと、次から次と、一息に煽っていくのでした。
酒に血走った彼らの目は、どれもぎらぎらと陰惨な光をたてています。
残忍な目、そして狡猾な目であります。
その風情、身のこなしからは、幾多の殺戮を繰り返し、金銀財宝の盗人をほしいままにし、まさに、世間を足蹴にするがごとくの生活をしていたことが容易に見て取れました。
しばらく深い霊視状態にありながら彼ら一団を観察していた隈本確先生は、とある一人のところでハッと目を止めました。
隈本確先生の霊視の焦点は、野盗の首領とおぼしき人物のすぐ隣で偉そうに兄貴風をふかしている横柄な面構えの男にピッタリと合っていました。
—―これだ!これが、あいつの正体だ!隈本確先生の霊的感性が、はっきりとそれをとらえました。
まさにその男こそ、ただいま地獄の夜叉界で、木戸さんの奥さんの髪をむんずとつかんで引きずり回しているあの妖怪の生前の姿だったのです。
やはり、生前において様々の悪に身を染め、傍若無人の限りを尽くしたような人間は、死後、霊界にあってはこのように地獄の生活を余儀なくされるのでしょうか。
隈本確先生は霊視のポイントを再び夜叉界に切り替えると、あの妖怪を目で追いました。
いた。
妖怪は相変わらず、木戸さんの奥さんの髪をむんずとつかんだまま、無数の穴が口をあけている不気味な大地を引きずり回しながら、あちらこちらと歩いているのでした。
次回に続きます。
真実を見る心眼
>隈本確先生は、この大型の犬かと見まごうばかりの妖怪も、必ずや人霊に相違ないという判断を下しました。
私が隈本確先生を心から尊敬をするのは、神霊治療という高級神霊からのエネルギーいただく方法をあみ出されただけでなく、今まで当たり前だと言われていた動物霊の祟りは実は人霊だということを暴かれたところです。
何故なら、今まで当たり前だと思われていたことが意外に真実は違っていたということはけっこうあります。
しかも、目に見えない霊の世界はほんの少しでも思い込みや願望があると、真実とはかけ離れたものが見えてくるからです。
私には隈本確先生の心眼は確かだと思います。
これだけ常に真実を見ることを心掛けるということは、常に自分を律していないとできないことです。
いつか自分も、隈本確先生のように思い込みや願望に振り回されない想いをもち続けたいと願っています。