前回の続きです。
意外な坂上幸子さん
数日後、隈本確先生は、神霊治療にやって来た奥様である坂上幸子さんと初めて対面をしました。
この時までは、会員の三条さんを通して、全ての連絡をとっていたのです。
隈本確先生は、初めて治療所に入って来た坂上さんを見た瞬間、何か違和感とでも言いたいような奇妙な違和感にとらわれました。
隈本確先生は、ほとんど反射的に坂上さんのご主人の顔が浮かんできました。
—―ちがう、あんまりちがいすぎる……。
この坂上幸子さん、治療依頼申し込み書には55歳と記入されています。
確か、ご主人は58歳だったはずですが……。
しかし、どう見ても、奥様である坂上幸子さんは60歳を超しているようにしか見えません。
男盛りの中年紳士らしい魅力をもったご主人に対して、気の毒に、この奥様はすでに老醜の陰りさえ漂わせています。
髪といえば、櫛でとかしたことがあるのだろうかと疑わしくなるほどボサボサ、まったく化粧なしの顔と言えば、シワとシミに占領されてしまっています。
そのうえ、すでに眉毛の跡形もなく、いかにも老いを感じさせています。
しかし、この際、問題は生理的な老いということだけではありません。
言ってみれば、実際の年齢以上の老いを誘発をしてしまった、その心のあり方が問題なのです。
よく「目は心の窓」と言われますが、何も、心の窓というのは目ばかりに限ったことではありません。
顔の表情やちょっとしたしぐさ、また、全身から漂ってくる気配、雰囲気にしても、当人の心の反映でないものはない一つないのです。
そうだとすれば、この坂上さんを実際の年齢以上に老け込ませて知っているのは、彼女自身の心のあり方にはかなりません。
まして、経済的には何の不足もない坂上さん、極端な生活苦のために老け込んでしまったなどという言い訳も通用しません。
坂上さんの開けっ放しの口、しまりのない表情からは、気品とか女らしさのかけらも見いだせないのです。
洋服はと見れば、何の変哲もない焦げ茶色のツーピースを、これまた、ただ着てさえいればいいという感じにまとっています。
これでは、ご主人が気の毒です。
この状態では、なるほど、ご主人の言われた通り、坂上さんはもはや、「女を上がってしまっている」風情であります。
しかも、さらに困ったことには、坂上さん自身は、そのようなことには全く気付いてもいないようです。
どっしりと腰をすえて、主婦の座におさまり返ってしまったような坂上さんは、あたかも自分が人生における勝者であるかのような、ある種の傲慢な気配さえ発散しているのでした。
それでも、肩こりと胃痛の神霊治療を終えると、坂上さんの表情はずっと生き生きして良くなってきました。
長年の肉体的苦しみから解放されたせいか、いくぶん若さも取り戻したように見受けられました。
次回に続きます。
私の祖母の世代
このブログを書きながら、隈本確先生の文章の上手さと表現力のレベルの高さを感じていました。
今回は、その表現力の高さがとてもいかされ、坂上幸子さんの様子がとてもリアルに表現をされ、目にうかぶようです。
55歳なのに還暦を過ぎているように見えると……
同性からすると、ちょっと怖いです。
気を付けなければいけないと思っています。
この話は何年前の話なのかはわかりませんが、今の55歳の人はとてもおしゃれで若いです。
このブログを読んでいる方は、おそらく私より若い方ばかりだと思いますので、私の親や祖母の時代の女性がどんな風だという事は、あまり知らないと思います。
私の祖母は、明治生まれだったと思います。
当時は、北陸の田舎の女の人は同じようなものだったと思います。
夏になって暑くなると、上半身裸でおっぱい丸出しでした。
祖母は8人の子供を産んで育てた人です。
ですから、もうおっぱいは想像におまかせします。
さすがに、大正生まれの母はそんなことはしませんでしたが。
私は、子どもころから見慣れた姿だったので気にもしていませんでした。
ところが、私が結婚をする前に、夫が実家にあいさつに来た時、祖母はあいさつに来たのですが、一応半そでのブラウスを着ているのですが、前のボタンは止めておらず胸は丸見えです。
その祖母の姿を見た夫は、相当びっくりしたようでした。
長い間、そのことを言っていました。
それから数十年過ぎた頃、北関東出身の知人とそういう話になった時、北関東でもそうだったそうです。
知人が言うには、「あの頃のおばあちゃんたちは、今考えると50代だったんだと思うんだけど、私がその年齢だけどとてもあんな格好できないわ」と言っていました。
私も知人のその言葉に同意しました。
坂上幸子さんの話から、とんでもない方に話が飛んでしまいました。